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「ソフトウェア開発者」としての自覚

いっそのこと、思い切って言ってみてはどうかと思う。 僕らノンプログラマって、実は「ソフトウェア開発者」なんだ。

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(本記事は、出版予定の書籍の原稿です。改善点がありましたら、コメントをいただければ嬉しく思います。Rindrics 拝)

僕らの成果物って、非物質的なもの: 手にとれないものであることが多いよね。 報告書みたいに、「手にとれる」成果物を作ることもあるけど1、少なくとも自動車をつくる仕事とはだいぶ違うはずだ。 ハードウェアをつくる仕事は、顧客の課題を物質的な製品で解決するけど、 僕らは、情報を意味のある形に編集することで解決する2

僕たち知的労働の商売道具は、情報だ。 僕らの仕事は、究極的にはソフトウェア開発につながっているんだよ。

知的労働はソフトウェア開発につながっている

もし僕の言っていることが腑に落ちないなら、悪い知的労働の例を考えてみるといい。 たとえば電子メーラ3の開発者が、自分たちがやるべき仕事を突き詰めて考えていなかったらどうなるだろう4? ザンネンな会社 Awesome Messaging を考えてみよう。 彼らが提供しているのは「遠くのお友達にメッセージをお届け」サービスだ。

自分がやるべき仕事を理解していない会社のサービスは、とにかく使い物にならない。 メーラがない世界で、あなたがお友達にメールを送りたくなったとしよう; Awesome Messaging のサービスを利用するには、次のような作業が必要だ:

  1. 「メモ帳」を開いてメッセージを書く(えっ?)
  2. メディア(SDカード・USB メモリ・CD-ROMなど)に保存する(えっ?)
  3. Awesome Messaging の受付で申し込み(アドレスのスペルミスに注意!)

あとは Awesome Messaging がメディアからメッセージを読み出し、 sendmail コマンドでお友達に送ってくれるはずだ5──頭がクラクラしてくるよね。 でも、ソフトウェア開発者としての自覚がないとは、こういうことだ。

あるいはサービス開発

さっきは「ソフトウェア開発につながっている」といったけど、サービス開発の方が適当な場合もある。 例えば、Amazon みたいな EC サービスの提供会社が、自社サービスの磨き込みをできていなかったらどうなるだろう? 容易に想像がつく形は、リンク集だ──商品の取り扱い業者の名前と連絡先のリスト、 そして各業者の注文書の PDF のダウンロードリンクがぶっきらぼうに載っているだけのね。 これだって、立派な「知的労働」ではある。 問題は、自分がやるべき仕事をわかっていないことだ。

我が身を振り返る

こんな仕事の仕方がおかしいと思ったら、こんどは自分の仕事について考えてみて欲しい。 Awesome Messaging 社みたいな働き方をしている知的労働者って、かなりの数いると思うし(僕自身もそうだった)、 リンク集しか提供しない「Amazon」って、どこかで見たことがあるよね。そう、自治体のホームページだ。 僕たちは、正しい顧客価値を提供できているかな。 彼らは、本当はどうなっていたいと6思っているんだろう?

顧客との接点に必ずしも IT が入っている必要はないけれど、 現代社会で知的労働に携わっているなら、社内は情報であふれているはずだ。 よい働き方をするには、僕らは、情報処理の達人: ソフトウェア開発者たちに学ぶ必要がある。

情報技術というメタ的スキル

勘違いしないで欲しいんだけど、僕はほかの職業を軽く見ているわけじゃないよ。 むしろ逆だ。 よい仕事をするためには、いろいろな職業に学ぶ必要がある。

それでも僕がソフトウェア開発者に学ぶ必要性を強調する理由は三つある: 一つ目は、よいやり方を積極的に取り入れる文化のため。 二つ目は、自動化をうまく活用し、いちど達成したことは将来も確実にできるようにしながら働く文化のため。 そしていちばん重要なのが三つ目──僕らノンプログラマはすでに「開発」しているからだ。

学ぶことが多い現代において、情報技術という彼らのメタ的スキルは、自己成長しながら働いていくために不可欠なスキルだ。 本書を読んで、みんなが「ソフトウェア開発者」としての自覚をもち、開発者たちに学んでいく重要性を理解してくれたら嬉しい。


  1. 現実世界に出力してやる必要があるけどね。印刷とも言うかな ↩︎

  2. 顧客の情報整理を手伝ったりすることもあるね ↩︎

  3. メールを送るソフトのことだよ。たとえば Mozilla Thunderbird とかね ↩︎

  4. 「プログラミングができなかったら」ではない ↩︎

  5. さて、お友達はどうやってメールを読むのだろう? ↩︎

  6. 「何をしたい」と考えるのは、視野を狭めてしまう危険があるよ ↩︎